2025年7月、ソフトウェア品質保証のリーディングカンパニー「ベリサーブ」が、米Panaya社と販売代理店契約を締結したというニュースが発表されました。この提携により、AIを活用したクラウド型テストソリューションが日本国内の企業にも広がることが期待されます。本記事では、その背景と提供されるソリューションの特徴を解説します。
なぜ今、AIによるテストソリューションなのか?
現在、企業のデジタル変革(DX)が加速する中で、ERPやSalesforceといった基幹業務システムは、頻繁なアップデートや機能追加を求められています。これに伴い、開発後のテスト工程はこれまで以上に複雑かつ重要な工程となっており、手動テストやExcel管理などの“属人的”な運用には限界が来ています。
特に大規模なシステムでは、「どこをテストすればよいのか」「どこに影響が出ているのか」を正確に把握できないまま広範囲を網羅的にテストせざるを得ず、結果としてテスト工数やコストが肥大化し、スケジュール遅延や品質劣化のリスクが高まっていました。
こうした課題に対して注目されているのが、AIを活用したテストソリューションです。AIによる自動解析とシナリオ最適化により、変更の影響をピンポイントで可視化し、必要なテストだけを効率よく実施することが可能になります。
また、近年では「ノーコード/ローコード」で操作できる自動テストツールも増えており、専門知識がなくても高精度なテスト自動化が実現できるようになりました。これにより、現場のエンジニアだけでなく、業務部門とも連携した“全社的な品質保証体制”の構築が容易になります。
さらに、リモートワークやグローバル分散開発の広がりにより、リアルタイムでの進捗共有や不具合管理のニーズも高まっています。従来のオフラインなテスト管理では追いつかず、SaaS型でクラウド上から一元的に管理できるツールの導入が急務となっているのです。
このように、スピード・品質・効率すべてを求められる現代のITプロジェクトにおいて、AIを活用したテストソリューションは“新しい当たり前”になりつつあります。今回のベリサーブとPanayaの提携は、まさにその潮流を象徴する動きと言えるでしょう。
提携の概要:ベリサーブ × Panaya
今回発表されたベリサーブとPanaya社の提携は、単なるソリューション販売の枠にとどまらず、日本国内のITプロジェクトの品質管理におけるパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めています。
株式会社ベリサーブは、日本を代表するソフトウェア品質保証の専門企業であり、40年以上にわたって1,100社を超える企業のテスト工程を支援してきた実績を持っています。その強みは、単なるテストの実行にとどまらず、プロジェクト計画段階からの参画や、開発・運用フェーズまでを見据えた品質向上支援をトータルで提供できる点にあります。
一方のPanaya社は、アメリカを拠点とし、ERP(SAP・Oracleなど)やSalesforceといった基幹業務システムに対して、AIを活用した影響分析・テスト自動化・品質管理ソリューションを提供するグローバル企業です。全世界で3,000社以上、Fortune 500の3分の1にも及ぶ企業で導入されており、その実績は折り紙付きです。
今回の提携により、ベリサーブはPanayaの主力製品である「Change Impact Analysis」「Test Dynamix」「Test Automation」などのAI搭載クラウドソリューションを日本国内で展開し、ライセンスの提供にとどまらず、導入支援から定着、運用支援までを一貫して担うことになります。
特に注目すべきは、ベリサーブがPanaya製品を単なる“外製ツール”としてではなく、日本企業の実務にフィットするようカスタマイズ・定着させる**「橋渡し役」**として機能する点です。Panayaのグローバル基準の技術と、ベリサーブの現場密着型の支援体制が融合することで、日本のITプロジェクトの品質管理は新たなステージに突入しようとしています。
この提携は、単なる一企業間の契約以上に、今後の“AI×品質保証”という分野の発展を占ううえでも重要な布石と言えるでしょう。
ベリサーブのテストソリューションとは?
ベリサーブは、長年にわたり日本企業のソフトウェア品質保証を支えてきたテスト支援の専門企業です。単にテスト業務を請け負うだけでなく、システム開発の上流工程から運用フェーズまでを視野に入れた包括的な品質保証サービスを提供しており、そのノウハウと信頼性の高さは業界内でも広く知られています。
主なサービス領域:
- テスト戦略・計画の立案 システム要件やプロジェクト特性に応じた最適なテストアプローチを設計。
- テスト設計・実行 正確なテストケースの設計と、経験豊富なエンジニアによる効率的なテスト実行を実施。
- テスト自動化支援 Seleniumなどのフレームワークを活用した自動化環境の構築や、CI/CDへの組み込み支援も提供。
- 品質分析・改善提案 テスト結果や不具合傾向から品質データを分析し、開発プロセス改善や再発防止策を提案。
- セキュリティ/性能/互換性テスト 機能テストだけでなく、非機能要件への対応力も強み。
また、近年ではクラウドアプリやERPに対応したテスト自動化ニーズの高まりを背景に、AIやSaaS型ソリューションとの連携も積極的に進めており、まさに今回のPanayaとの提携はその延長線上に位置づけられます。
なぜベリサーブなのか?
- テスト支援だけでなく、“品質づくり”のパートナーとして企業に寄り添う姿勢。
- 製品導入だけで終わらない、教育・定着支援・運用保守までのトータルサポート。
- 金融、製造、公共など幅広い業界での支援実績。
こうした強みを背景に、ベリサーブはPanayaソリューションの最適な活用を日本企業に根づかせる“現場側の翻訳者”として重要な役割を果たしていくことになります。
ベリサーブの強み:導入から定着まで一気通貫の支援
Panayaのような高度なクラウド型テストソリューションは、そのまま導入すれば即座に効果が出るというものではありません。導入したツールを現場に根づかせ、組織の業務フローに最適化し、継続的に活用し続けられるかどうかが、真の導入成功の分かれ目になります。
ここで力を発揮するのが、ベリサーブの“伴走型”支援体制です。単なる製品の導入支援にとどまらず、「選定 → 設計 → 定着 → 改善」のすべてのフェーズにおいて、顧客企業と並走しながら価値を最大化する支援を行います。
主な支援内容と特長:
🔧 1. 導入設計支援(初期フェーズ)
- 現行業務との適合性を評価し、最適な導入構成を提案
- テスト戦略やプロセスに合わせて、ツールの活用ポイントを明確化
- 初期設定、ユーザー権限設計、テンプレート整備などの環境構築を実施
📘 2. 教育・トレーニング支援(定着フェーズ)
- 操作説明会やトレーニング資料の提供によって、ユーザーの理解と習熟を支援
- 管理者・エンドユーザー向けに分けた段階的教育
- よくある質問や運用Tipsの共有によるサポート体制の整備
🔄 3. 運用サポート・定着支援(中長期フェーズ)
- 実際のプロジェクト内でのツール利用をフォローアップ
- 活用状況の定期レビュー・課題抽出と改善提案
- テストプロセスへの組み込みや、レポート出力・実績管理の最適化支援
📈 4. 効果測定と継続的改善
- テスト証跡や不具合分析などから、可視化された「成果」を示し、ROIを定量的に評価
- 継続的な活用を促進するための改善サイクル設計
- 顧客の変化に応じたカスタマイズ・再設定も柔軟に対応
なぜ「定着支援」が重要なのか?
テスト自動化ツールやクラウド型管理ツールの多くは、導入されたものの十分に活用されず「形だけで終わってしまう」ケースが少なくありません。
こうした背景を踏まえ、ベリサーブでは「システム定着支援」に重きを置き、“ツールを使いこなす文化”の醸成までを視野に入れた支援を徹底しています。
ERPやSalesforceのようなミッションクリティカルなシステムを扱う現場では、日常業務と開発・テストが密接に絡むため、単にIT部門への教育だけでなく、業務部門・マネジメント層も含めた全体最適の視点が求められます。
ベリサーブはその視点を持ち、企業文化や業務プロセスに応じた柔軟な対応力をもって、一気通貫の支援を実現できる稀有なパートナーなのです。
今後の展望:ERPの“変更耐性”を高める時代へ
企業のデジタル変革(DX)が進む現在、ERPやCRMなどの基幹業務システムは、もはや「一度導入して終わり」の時代ではありません。市場環境や制度改正、業務プロセスの変化に迅速に対応するためには、頻繁なアップデートや改修に柔軟に耐えられる“変更耐性”が企業システムに求められています。
特にSAPやOracle、Salesforceといった大規模クラウドサービスでは、半年〜1年ごとに機能追加や仕様変更が加わることが当たり前になっています。これに対応するたびに、手動での影響分析や網羅的な回帰テストを行うのでは、コストもリードタイムも現実的ではありません。
そのような状況下で重要になるのが、「変更があってもスムーズにリリースできる仕組み」をいかに社内に構築できるか、という点です。
“変更に強いERP運用”を実現するための3つの視点:
- 予測と影響の“見える化” 変更がどこに影響を与えるかを迅速かつ正確に特定できれば、無駄なテストや不必要な改修を避けられます。PanayaのようなAIによる影響分析ツールは、この工程を数日から数時間に短縮する力を持っています。
- テストプロセスの“自動化と標準化” 属人的・手作業だったテストをノーコードで自動化し、定型的な回帰テストはツールに任せることで、プロジェクトメンバーは本来注力すべき業務に集中できるようになります。
- “継続的改善”の文化づくり ツールや仕組みはあくまで手段にすぎません。重要なのは、それを活用し続ける文化と運用体制を根付かせることです。ベリサーブのように教育や定着支援に強みを持つパートナーがいることで、この「継続する力」を組織内に内製化できます。
テストは“品質の守り”から“成長のドライバー”へ
これまでテストは「品質を守るための最後の砦」として認識されがちでしたが、今後はむしろ“変更を前提としたシステム運用”を可能にする前向きな仕組みとして捉える必要があります。言い換えれば、テストこそが変化に強い組織を支える“戦略的資産”となるのです。
今回のベリサーブとPanayaの提携は、その変化の先駆けとなるものであり、今後日本企業がグローバルで戦うための武器を提供する重要な一歩となるでしょう。
まとめ
今回のベリサーブとPanayaの提携は、単なる製品の販売や導入にとどまらず、日本のIT現場における「テストのあり方」そのものを再定義する、大きな転換点となる可能性を秘めています。
変化が当たり前となった現代のビジネス環境において、ERPやSalesforceなどの基幹業務システムは常に“動き続ける存在”です。その中で品質を担保し、効率よくテストを進めるには、人手と経験に頼る従来型のテスト体制だけでは限界があります。
PanayaのAI搭載ソリューションは、「変更の影響を見える化する」「無駄を省いたテスト範囲を提示する」「回帰テストを自動化する」といった、まさに“テストのスマート化”を実現するための切り札です。そして、それを日本企業の業務文化に合わせて着実に定着させる存在がベリサーブです。
ベリサーブは、単なるツールベンダーではなく、現場に寄り添いながら品質管理の進化をともに実現するパートナーです。導入設計からトレーニング、定着、運用改善までを一貫してサポートすることで、ツールを“使える状態”から“成果が出る状態”へと導いてくれます。
今後、多くの企業がデジタル変革を推進するなかで、「変化を恐れず、変化に強いシステムを持つこと」が競争優位のカギとなっていきます。
参考文献
- ソフトウェア品質を創造するベリサーブ、ITプロジェクトのテスト工程をデジタル改革するPanaya社と販売代理店契約を締結
https://www.excite.co.jp/news/article/Prtimes_2025-07-30-48768-80/ - Panaya ソリューション紹介(ベリサーブ公式サイト)
https://www.veriserve.co.jp/service/detail/panaya.html - Panaya 公式サイト(日本語)
https://www.panaya.com/jp/ - ベリサーブ 会社情報・サービス概要
https://www.veriserve.co.jp/company/ - Panaya Change Intelligence Platform Overview(英語)
https://www.panaya.com/solutions/change-intelligence-platform/