アシスト、日本でELTツール「Fivetran」の販売を開始──他の国内パートナー企業との違いとは?

アシスト、日本でELTツール「Fivetran」の販売を開始──他の国内パートナー企業との違いとは?
目次

はじめに

2025年7月15日、株式会社アシストは、米Fivetran Inc.が提供するクラウド型ELT(Extract-Load-Transform)ツール「Fivetran」の日本国内販売を正式に開始しました。これにより、従来は一部パートナーを通じて提供されていたFivetranが、より広範な企業へと導入しやすくなり、国産企業のデータ基盤整備のハードルが一段と下がることが期待されます。

Fivetranは、数百を超えるクラウドサービスやデータベースと連携でき、複雑なデータ変換処理を排し、ノーコードで高速・安定したデータパイプラインを構築できるのが特徴です。データの「抽出→格納→変換」というELT方式を採用し、クラウドDWH(Snowflake、BigQuery、Redshiftなど)の能力を最大限に活用する設計がなされています。

今回の発表で特に注目されているのは、アシストが「2025 Fivetran Global Partner Awards」においてAPAC地域の「Rising Star Partner of the Year」に選出されたという点です。これは、同社が持つBIやDWH、データ統合の支援実績が世界的に評価された証でもあり、国内パートナーの中でも一歩リードしたポジションにあることを示しています。

この記事では、Fivetranとはどのような製品なのかを改めて整理しつつ、アシストをはじめとする国内の主な導入支援パートナーの特徴を比較し、導入を検討する際に考慮すべきポイントを紹介していきます。

Fivetranとは?

Fivetran(ファイブトラン)は、米カリフォルニア州オークランドに本社を構えるFivetran Inc.が提供する、フルマネージド型のクラウドELTプラットフォームです。特に、データ統合の「複雑さ」を極限まで削減し、誰でも簡単に、安定したデータパイプラインを構築できることをコンセプトに開発されています。

🔄 ETLとの違い:なぜ“ELT”なのか?

従来のデータ統合は「ETL」(Extract → Transform → Load)という流れで、変換処理をETLツール内で実行する構成が一般的でした。しかし、Fivetranはそれとは異なり、「ELT」(Extract → Load → Transform)を採用しています。これは、データの変換処理をDWH(データウェアハウス)側に任せることで、スケーラビリティとメンテナンス性を向上させ、パフォーマンスの最大化を実現するアプローチです。

🔌 圧倒的な対応コネクタ数とノーコード設定

Fivetranの大きな強みの一つが、700種類以上のコネクタに対応している点です。Salesforce、Google Analytics、Stripe、HubSpot、MySQL、PostgreSQL、MongoDB、さらにはSaaSやオンプレミスDB、ファイルストレージなど、ビジネスで利用されるあらゆるデータソースとの接続が可能です。

また、これらのコネクタはノーコードで接続・設定が可能で、専門的な知識がなくても数クリックで同期設定を完了できます。これにより、これまでデータエンジニアに頼らざるを得なかった業務を、現場のビジネス担当者でも一部担えるようになる点が画期的です。

🔁 自動同期・差分更新・スキーマ変化への追従

Fivetranは、初回同期以降は差分のみを検出して自動で取り込む設計になっており、DWHへの負荷を最小限に抑えながら、常に最新状態のデータを保持することが可能です。さらに、データソース側でのスキーマ変更(列の追加・削除・型変更など)にも自動で追従できるため、保守運用コストが格段に低減されます。

💡 こんな課題を抱える企業に最適

Fivetranは以下のような課題を抱える企業にとって特に有効です:

  • 「データソースが多すぎて手作業で連携するのは非現実的」
  • 「データパイプラインが属人化しており、保守が困難」
  • 「マーケや営業部門が自分たちでデータを活用したい」
  • 「DWHやBIは導入したが、データの整備が追いつかない」

導入によって、データ分析基盤の整備やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を加速する土台が構築されます。

アシストによるFivetran販売の背景

株式会社アシストは、2025年7月15日にFivetran Inc.との正式な代理店契約を締結し、日本国内でのFivetranの提供と導入支援を本格的に開始しました。この発表は、単なる製品販売の開始という枠を超え、日本市場におけるFivetranの本格普及が始まったことを象徴する出来事として注目されています。

アシストはこれまで、企業のBI(ビジネスインテリジェンス)やDWH(データウェアハウス)構築を多数手がけてきた老舗のITサービス企業であり、特に「データをどう活かすか」「データ活用の基盤をどう整えるか」に関して豊富なノウハウを持っています。既存のETL製品やデータ連携基盤を多数扱ってきた経験がある同社にとって、Fivetranはその“次世代ソリューション”として位置づけられています。

さらに、アシストは今回の取り組みに先立ち、社内でのPoC(概念実証)や一部顧客との先行プロジェクトを通じて、Fivetranの国内環境における有効性や適応可能性を丁寧に検証してきました。その結果、以下のような判断に至ったとされています:

  • ノーコードであるため、開発リソースを割かずに導入できる
  • スキーマ追従などの自動化機能が非常に高く、保守工数が激減する
  • クラウドDWHとの連携が優れており、パフォーマンス最適化がしやすい
  • 国内企業の「データ活用の初手」として適している

こうした実績と取り組みが評価され、アシストは「2025 Fivetran Global Partner Awards」にて、APAC(アジア太平洋地域)における“Rising Star Partner of the Year”に選出されました。この賞は、Fivetran本社がグローバルで特に注目した成長パートナーに与えるもので、日本国内企業として唯一の受賞となります。

この受賞は、Fivetranの導入を単なる“製品販売”で終わらせるのではなく、「データ活用の成功」まで導く支援ができるパートナーであることを裏付けています。

アシストは今後、Fivetranを単体で提供するだけでなく、同社の他の製品群(MotionBoard、DataSpider、Snowflakeなど)と組み合わせて、統合的なデータ活用基盤の構築を提案していく方針を打ち出しています。

国内の他パートナー企業

Fivetranは、日本国内では以前から一部の技術パートナーやSaaSインテグレーターを通じて導入されてきました。今回のアシストによる正式販売開始は注目を集めていますが、Fivetranの国内展開はそれ以前から水面下で進んでおり、既に導入実績を持つ企業も存在します。

本セクションでは、代表的な2社──クラスメソッドおよび日立ソリューションズ東日本──に焦点をあて、それぞれの特徴や支援スタイルの違いを紹介します。

🏢 クラスメソッド

クラスメソッドは、AWSや各種クラウドサービスに精通したクラウドネイティブ型のインテグレーターであり、早期からFivetranの導入支援に取り組んできた実績を持つ企業の1つです。

特に注目すべきは、Fivetranを単なるETL/ELTツールとしてではなく、「クラウドDWHと連携した分析基盤の中核」として位置づけている点です。AWSのAmazon RedshiftやGoogle BigQuery、Snowflakeなどと組み合わせたアーキテクチャ提案を数多く行っており、導入から運用、可視化ツール(Looker、Tableauなど)までトータルに支援する体制を整えています。

また、同社は技術ブログの発信力にも定評があり、Fivetranに関する実践的な設定ノウハウやユースケース、料金試算などを日本語で多数公開しています。これにより、ユーザー側でも事前に技術的なイメージを掴みやすいというメリットがあります。

クラスメソッドは、特に次のようなニーズを持つ企業に適しています:

  • 自社でAWSやGCPを活用している
  • クラウド移行とデータ活用を同時に進めたい
  • 内製チームによるデータ分析を加速させたい

🏢 日立ソリューションズ東日本

一方、日立ソリューションズ東日本は、大企業向けシステム構築や業務システム連携に強みを持つSIerです。2023年12月にはFivetran Inc.とのパートナー契約を締結し、日本市場におけるFivetranの展開を早期から支援しています。

同社の特徴は、Fivetranを使ったデータ連携を、ERPや基幹システムと組み合わせて提案している点にあります。SAPやOracleなどのエンタープライズ向けシステムからデータを抽出し、クラウドDWHに連携させる際の障壁を乗り越えるための設計力や、セキュリティ・ガバナンスへの配慮など、大規模企業が求める要件を満たす体制を有しています。

また、PoCから運用保守までを一貫して提供できる体制を持ち、特に「Fivetranを業務にどう組み込むか」に関する提案力が評価されています。

日立ソリューションズ東日本は、以下のようなニーズにマッチします:

  • ERPや業務系システムとクラウドを連携させたい
  • SIerによる一括導入・保守体制を求めている
  • グループ会社全体のデータ統合を進めたい

💡 まとめ:国内パートナーの選び方

このように、Fivetranの国内導入支援を行っているパートナー企業は、それぞれ異なる得意領域と支援スタイルを持っています。以下に簡潔に整理します。

企業名主な特徴対応領域
アシストBI・DWH・ELT連携の一体提案、グローバル賞受賞汎用・中堅〜大企業向け
クラスメソッドAWS/GCP対応、技術ブログ・ドキュメントが充実クラウドネイティブ型、内製推進型
日立ソリューションズ東日本基幹システム連携、大企業向け導入支援ERP/オンプレ連携、堅牢性重視

パートナー選定においては、単に「販売しているかどうか」だけでなく、自社のシステム環境・運用方針・内製志向かどうかといった観点での比較が重要となります。

今後の展望

Fivetranの国内展開は、アシストによる正式販売を契機に新たなフェーズに入ったといえます。従来は、クラウドやデータ基盤に強い一部の企業に限られていたFivetranの導入が、より幅広い業種・企業規模に拡大していくことが期待されます。

その背景には、企業が直面している共通課題があります。それは、「データはあるが、使える状態になっていない」という現実です。複数の業務システム、SaaS、外部サービスに分散したデータを“分析可能な状態”に集約するには、多くのコストと時間がかかります。しかも、その処理は属人化しやすく、メンテナンスの負担も大きくなりがちです。

こうした課題をFivetranは、ノーコード・自動化・高い保守性というアプローチで解決しようとしています。特に以下のようなトレンドと親和性が高く、今後の活用範囲はさらに広がると見られます。

✅ 1. 生成AI・LLMのための「クリーンな学習データ基盤」

多くの企業が生成AIや大規模言語モデル(LLM)を自社活用しようとする中で、最初の壁になるのが「学習・推論に適したデータの整備」です。Fivetranは、社内外のデータをリアルタイムで一元化し、変換ロジックもDWH上で制御可能なため、信頼できる学習データパイプラインを構築するうえで大きな武器になります。

✅ 2. 中堅・中小企業への展開拡大

これまでクラウドDWHやELT基盤は、大企業向けのソリューションという印象が強くありました。しかし、Fivetranは初期導入のハードルが低く、サブスクリプション型でスモールスタートが可能なため、中堅・中小企業にとっても導入現実性の高い選択肢です。

加えて、クラスメソッドのようなインテグレーターが中小規模案件を数多く手がけており、アシストもその層に向けた支援メニューを展開していく可能性があります。

✅ 3. 国産SaaS・業務アプリとの統合強化

Fivetranはもともと海外SaaSとの連携に強みがありますが、日本市場においては、kintone、サイボウズ、弥生、freee、マネーフォワードなどの国産業務サービスとの連携が、今後の大きなテーマになります。こうした領域では、パートナー企業によるコネクタ拡張APIブリッジの開発が進みつつあり、国内特化型のソリューションが生まれる可能性もあります。

✅ 4. ベンダーロックインの回避とマルチクラウド対応

Fivetranはベンダー中立的な立場をとっており、AWS、Azure、GCPなど複数のクラウド環境に対応しています。今後、企業のデータインフラがマルチクラウド/ハイブリッド構成になる中で、柔軟なデータ連携基盤としてFivetranが選ばれる機会はますます増えるでしょう。

また、クラウドからオンプレミス、SaaSからDWH、BIまでを一気通貫でつなぐ「統合データ基盤」を構築する際にも、中心的な役割を担うことが期待されています。

おわりに

Fivetranは、これまで煩雑で属人化しがちだったデータ統合の作業を、“誰でも・簡単に・自動で”行えるようにする革新的なプラットフォームです。ビジネスの現場では、あらゆる部門・サービスから日々大量のデータが生まれていますが、それらをリアルタイムで結び付け、意思決定や改善に役立てるためには、高速かつ信頼性の高いデータパイプラインが必要です。

そうした中、アシストが日本市場においてFivetranの正式な販売を開始した意義は非常に大きいと言えるでしょう。単に製品を届けるだけでなく、長年培ったBI・DWH・ETLのノウハウを活かし、導入から定着まで伴走する体制を整えている点は、他のツールやベンダーとは一線を画しています。

また、クラスメソッドや日立ソリューションズ東日本といった他の先行パートナー企業も、すでに実践的な知見を蓄積しており、Fivetranを軸としたデータ基盤構築は、今後さらに広範な業界・業種で普及していくことが見込まれます。

しかし、Fivetranを導入することがゴールではありません。本当の意味で価値を引き出すには、

  • 統合すべきデータは何か?
  • 誰がどのように活用するのか?
  • どんな指標を見て、どんな判断につなげるのか?

といった「データ活用の目的と文脈」を明確にする必要があります。Fivetranは、その土台をつくるための“最強の裏方”であり、組織のデータドリブン化を支えるインフラです。

これからFivetranの導入を検討する企業にとって重要なのは、ツール選定だけでなく、「誰と組むか」=パートナー選びです。自社の課題や技術力、予算に応じて、最適な支援者を選ぶことが、プロジェクト成功の鍵を握ります。

📚 参考文献

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次