Windows 10、本日サポート終了 ― 10年の歴史と現状を総点検

Windows 10、本日サポート終了 ― 10年の歴史と現状を総点検

Microsoft は 2025 年 10 月 14 日をもって Windows 10 のサポートを終了します。2015 年の提供開始から約 10 年にわたり、多くの企業・教育機関・個人ユーザーに利用されてきた Windows 10 は、安定性と互換性を重視した設計により、長期間にわたって業務システムや一般用途の基盤として定着しました。

今回のサポート終了により、Windows 10 は以降のセキュリティ更新や技術サポートの提供が終了します。これに伴い、更新プログラムの配信停止、脆弱性修正の非対応、そして一部アプリケーションやデバイスドライバーのサポート打ち切りといった影響が生じます。Microsoft は移行先として Windows 11 への更新を推奨しており、同時に一部のユーザー向けには有償または特定条件下での拡張セキュリティ更新(ESU)プログラムを提供しています。

また、Adobe や Trend Micro をはじめとする主要ベンダーも、Windows 10 のサポートを段階的に終了する方針を明らかにしています。これにより、サードパーティアプリケーションの利用環境にも制約が生じ、特に業務システムを Windows 10 上で維持している企業にとっては運用継続の可否が重要な検討課題となっています。

本稿では、サポート終了を迎えた Windows 10 の現状について、世界的なシェア動向、既知の不具合、主要アプリケーションの対応状況、ESU の展開、さらにサードパーティによる延命策までを整理します。

目次

Windows 10のシェア状況\

調査会社 StatCounter のデータによると、2025年7月時点で世界における Windows 10 のシェアは約 44.6% でした。Windows 11 のシェアは約 52% であり、両者を合わせると Windows 系 OS がデスクトップ市場全体の約 96% を占めています。

日本国内でも同時期のデータでは、Windows 10 が約 45%、Windows 11 が約 52% と報告されています。

これらの統計からは、Windows 11 への移行が進む一方で、Windows 10 の利用率が依然として高い水準にあることが分かります。特に企業や教育機関などの業務端末では、アプリケーションの互換性や運用体制の理由から Windows 10 が継続使用されており、2025年10月のサポート終了時点でも相当数のデバイスが稼働している状況です。

サポート終了直前まで残った既知の不具合

Windows 10 の最終版であるバージョン 22H2 には、サポート終了直前の時点でも既知の不具合が残されています。Microsoft が公開している「Windows Release Health」では、これらの問題が引き続き掲載されており、10月14日以降は新たな修正が提供されないことが明記されています。

そのため、サポート終了後も一部の不具合が継続する可能性があります。以下では、公式に公表されている既知の問題の内容を示します。

最終ビルド(22H2)で報告された問題点

Microsoft が公表している既知の問題には、以下のようなものがあります。 

問題名内容概要
Windows 11 メディア作成ツールが Windows 10 で正しく機能しない可能性Windows 11 のメディア作成ツール(バージョン 26100.6584)が、Windows 10 デバイス上で予期せず終了したりエラーを表示したりする場合があるという問題。 
Web フィルタリングが有効なブラウザーで保護者の同意が表示されないファミリーセーフティ(Web フィルタリング)が有効な設定時、一部ブラウザーで保護者の同意プロンプトが表示されない問題が報告されている。 

これらはいずれも「既知の問題」としてリストアップされており、完全な解決がなされているという明示はされていません。 

Windows 10でサポートが終了するMicrosoft製アプリケーション

Microsoft のサポート文書によれば、Windows 10 のサポート終了に伴い、いくつかの Microsoft 製アプリケーションがその稼働環境としての Windows 10 に対するサポートを停止するか、制限される扱いとなります。以下が主要なものです。

Microsoft 365 アプリ(Office 系アプリ等)

Microsoft は、Windows 10 のサポート終了日である 2025年10月14日をもって、Windows 10 上での Microsoft 365 アプリのサポートも終了すると明示しています。 

ただし、Microsoft は例外措置として、Windows 10 上の Microsoft 365 アプリに対しては、2028年10月10日までセキュリティ更新の提供を継続する計画を示しています。 

Microsoft Store 経由インストール版 Microsoft 365 アプリ

Microsoft Store 経由でインストールされた Microsoft 365 アプリについては、2025年10月をもって 機能更新の提供が停止され、セキュリティ更新は 2026年12月 まで提供されると案内されています。

Windows 10でサポートが終了する主要サードパーティアプリケーション

Windows 10 のサポート終了に伴い、主要なサードパーティベンダーも順次、Windows 10 に対する製品サポートの終了や移行方針を発表しています。これらの製品は、Windows 11 以降の環境を標準動作対象とするものが増えており、今後は旧環境での継続利用が制限される可能性があります。

以下では、代表的なソフトウェアベンダーによるサポート終了方針について整理します。

Adobe製品(Creative Cloud/Acrobatなど)

Adobe の公式ヘルプページによれば、Creative Cloud の各デスクトップアプリケーションは、**最新バージョンおよびその一つ前(二世代前までを含む)**の OS に対して動作サポートを提供する方針を採っています。例えば、Creative Cloud 2025 においては、Windows 11(23H2/22H2/21H2)のほか、Windows 10(22H2/21H2)を対象とするアプリが含まれています。

Photoshop のシステム要件を見ると、Windows 10(22H2)での動作が明記されており、最低 RAM、GPU、記憶装置要件など具体的仕様が併記されています。 ただし、Adobe は LTSB や LTSC 系統のバージョンには対応しない旨も明示しており、特殊版 Windows 10 では動作制限が出る可能性があります。

Acrobat(PDF 関連アプリ)についての公式明記は、Creative Cloud の OS 要件ガイドラインの中で包括的な製品群の一部として扱われています。Adobe の方針として、Creative Cloud 製品は「最新 OS とその前後バージョンへの対応」を前提とする運用を継続するものとされています。

なお、Adobe は Premiere Rush を 2025年9月30日で提供終了(ダウンロード不可)にすると発表しており、これは一部 Adobe アプリケーションで機能削除・提供終了がすでに始まっている例です。

Adobe 製品においては Windows 10(特に 22H2/21H2)への互換性を一部維持してはいるものの、サポート対象 OS の範囲を「最新+2世代」などで限定する方式を採用しており、Windows 10 のサポート終了後は順次制限が強まる可能性があります。

セキュリティソフト(Trend Micro/Symantec/Norton)

Trend Micro、Symantec(Broadcom)、Norton(Gen Digital 系列)といったセキュリティベンダーも、Windows 10 対応について公式要件やサポートポリシーを公開しています。以下はそれらから確認できる事実です。

Trend Micro

  • Trend Micro の最新版セキュリティソフトは、Windows 10 および Windows 11 をサポート対象 OS として明記しています。
  • ただし Trend Micro の一部製品、たとえば「Endpoint Encryption(TMEE)」では、Windows 10 22H2 を含む環境において、Full Disk EncryptionFile Encryption 機能がサポート対象外になる旨が記載されています。
  • また、Trend Micro のクラウド型セキュリティ製品(Deep Security/Trend Cloud One)も Windows 10 環境での互換性が明記されています。

Symantec(Broadcom)

  • Symantec のエンドポイント製品(Symantec Endpoint Protection 14.x など)は、Windows 10 をサポート OS に含んでおり、Broadcom 社の製品互換性マトリクス上で Windows 10/Windows 11 の両対応が明示されています。
  • ただし、Symantec 製品のバージョンやリリース更新条件によって適用可能な Windows 10 のビルドや機能には制限がある旨も記載されています。

Norton(Gen Digital 系列)

  • Norton のサポート情報には、Windows XP/Vista/7 のサポート終了に関する記述はありますが、Windows 10 に対して明確に「サポート終了」を表明した文言は、少なくとも当該情報上では確認できません。
  • ただし、Norton の UWP(Universal Windows Platform)版アプリケーションについては、2026年3月31日付で提供・サポート終了を予定する旨の案内が出ています。
  • また、Norton 製品のサポートは「サポート終了期限に達していない製品に対してのみ提供する」というポリシーが公式に案内されています。

個人向けESU(拡張セキュリティ更新)のロールアウト状況

Microsoft は、Windows 10 の一般サポート終了に合わせて、個人利用者を対象とした拡張セキュリティ更新(Extended Security Updates、以下 ESU)の提供を開始しました。従来は法人契約向けに限定されていたプログラムを個人にも開放したものであり、Windows 10 Home および Pro エディションが対象となっています。

このプログラムでは、セキュリティ更新を継続して受け取るための登録手続きが順次展開されています。設定アプリから直接登録できる仕組みが導入されており、Microsoft アカウントを通じて有効化する形式が採られています。料金体系は段階的に設定されており、初年度は低価格、もしくは無償で利用できる地域も存在します。

2025年10月時点では、登録画面が表示されない利用者や、手続きの案内が遅延している事例が一部で報告されていますが、広範囲に及ぶ障害や混乱は確認されていません。大半のユーザー環境では、すでに更新プログラムの配信が行われており、段階的なロールアウトが概ね進んでいる状況です。

なお、ESU による更新内容は、これまでの Windows Update と同様に配信され、セキュリティ修正に限定されています。機能追加や仕様変更は含まれておらず、あくまで既存環境を安全に維持することを目的としています。Microsoft は今後、ESU の対象期間を最大 3 年間とする計画を公表しており、2028 年までの継続提供を想定しています。

Windows 10を引き続き保護するサードパーティの取り組み

Windows 10 のサポート終了後も、サードパーティによってセキュリティ維持を目的とした補完的な施策がいくつか発表されています。最も注目されているのは 0patch によるマイクロパッチ提供で、Windows 10 v22H2 を対象に少なくとも 5 年間、重要脆弱性に対するパッチを適用する計画が公式に示されています。

0patch の提供方式では、改変を伴わない “マイクロパッチ” を実行時メモリ上で当てる技術を用いるため、再起動不要でパッチ適用できる点が特徴です。これは、伝統的なアップデート方式よりも運用負荷を抑える設計です。

0patch の料金体系では、個人利用者向け “Pro” プランやエンタープライズ向けプランが用意されており、1 年契約、更新単位で利用できる方式です。

これらの取り組みは、Microsoft 提供の更新が終了したあとのセキュリティ維持策として選択肢を提供するものです。

おわりに

Windows 10 のサポート終了は、単に一つの OS の終焉というだけでなく、約10年にわたり企業・教育機関・個人ユーザーの基盤として機能してきた環境の節目を意味します。Microsoft は Windows 11 への移行を促進しつつ、移行が困難な利用者に対しては ESU(拡張セキュリティ更新)を提供することで、安全性を維持する手段を残しました。

一方で、サードパーティによる独自の延命策や補完的なセキュリティ支援も始まっており、0patch のようなマイクロパッチ配信サービスがその一例となっています。これらの動きは、従来の OS 依存型サポートに代わり、外部事業者や個人が自らのリスク管理を行う時代への移行を示しています。

今後は、Windows 10 のサポート終了によって生じる環境更新の波が、ハードウェアの更新やアプリケーションの再設計を促す契機となります。長期的な観点では、OS の更新サイクルに依存しないシステム設計や、クラウドサービスを中心とした運用への転換が求められます。サポート終了後も安全に利用を続けるためには、各組織が自らのシステム構成と運用方針を見直し、将来の移行計画を明確にすることが不可欠です。

参考文献

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