Windows 11 24H2 ― SSD破壊問題はKB5064081でサイレント修正されたのか

2025年夏、Windows 11 version 24H2 で配信された累積更新プログラムの適用後に、一部のユーザー環境で SSD が突然認識されなくなる、あるいはデータが消失するという深刻な事例が報告されました。特に日本国内からの報告が目立ち、影響を受けたユーザーからは「システムドライブが起動しなくなった」「BIOSレベルでSSDが認識されない」といった声が寄せられ、単なるOSの不具合にとどまらず、ハードウェアに物理的な損傷を与えるのではないかという強い懸念が広がりました。

この問題は「SSD破壊問題」と呼ばれ、メディアやコミュニティで大きな注目を集めました。Microsoft は当初から「社内のテレメトリや検証環境ではSSDの故障を再現できていない」と説明しており、公式に不具合として認めたわけではありません。しかし、ユーザー側ではアップデート後に実際の被害が相次いだことから、原因が Windows Update にあるのか、それともハードウェアやファームウェアに起因するのかを巡って混乱が続いています。

そうした中で、2025年8月末に配信された KB5064081 を適用した一部のユーザーから「SSD破壊問題が発生しなくなった」との報告が出始めました。このことが「Microsoft がサイレントに修正したのではないか」という推測を呼び、さらに議論を呼んでいます。本記事では、KB5064081 の内容とこの「解消報告」が意味すること、そして現時点で考えられるシナリオについて整理します。

KB5064081 とは何か

KB5064081 は、2025年8月29日に公開された Windows 11 version 24H2 向けの累積的なプレビュー更新プログラムであり、適用後の OS ビルド番号は 26100.5074 となります。通常、この種の「プレビュー更新」は月末にリリースされ、本番適用前に利用者からのフィードバックを収集する役割を担っており、セキュリティ修正というよりは不具合修正や機能改善に重点が置かれています。

今回の KB5064081 では、以下のように幅広い修正が含まれています。

  • アプリの安定性向上 textinputframework.dll に関連する不具合により、Sticky Notes や Notepad が予期せずクラッシュする問題を修正。
  • システムのクラッシュ対策 dbgcore.dll に起因する不具合により、Explorer などのアプリケーションが不安定になる現象を解消。
  • 認証関連の修正 Kerberos を利用したクラウド共有へのアクセス時に発生するクラッシュを修正し、エンタープライズ環境での安定性を改善。
  • ログイン時の遅延改善 ログイン画面で「Just a moment」や白い画面が数分続く現象を改善。
  • マルチメディア関連の改善 Miracast でテレビへ映像をキャストした際に数秒後に音声が停止する不具合や、オーディオサービスが応答を停止して再生できなくなる問題を修正。
  • ストレージ関連の改善 ReFS(Resilient File System)で大容量ファイルを扱う際、バックアップアプリが過剰にメモリを消費する不具合を修正。
  • IME・入力システムの修正 中国語 IME で拡張文字が正しく表示されない問題や、タッチキーボード利用時に特定条件下で入力不能になる現象を改善。
  • ARM64 デバイスでの最適化 ARM64 環境におけるアプリインストール処理の遅延を解消し、モバイルデバイスでの操作感を改善。

以上のように、KB5064081 は Windows の幅広い領域にわたって修正を加えるパッチであり、単一の不具合だけでなく OS 全体の安定性やユーザー体験を改善することを目的としています。ただし、公式のリリースノートには SSD に関連する修正内容は一切記載されていません。それにもかかわらず、ユーザーの一部から「SSD破壊問題が起きなくなった」という報告があり、これが「サイレント修正説」を生むきっかけとなっています。

公式見解と不透明さ

今回の問題に関して、Microsoft は公式に「KB5064081 が SSD 破壊問題を修正した」とは一切発表していません。むしろ同社は一貫して「社内の検証環境およびテレメトリデータでは SSD 障害を再現できていない」と説明しており、現時点では Windows Update が直接的な原因であると認めていないのが実情です。

公式ドキュメント(リリースノート)にも SSD に関する記述はなく、あくまで「アプリのクラッシュ修正」「ログイン画面遅延の改善」「ReFS のメモリ使用修正」といった一般的な安定性向上が並ぶにとどまっています。したがって、KB5064081 を適用した後に SSD 問題が発生しなくなったというユーザーの報告は、公式な根拠に裏付けられたものではなく、あくまでコミュニティやメディアを通じて流布している「観測事例」にすぎません。

さらに不透明さを増しているのは、Microsoft 以外の関係者の動きです。Phison など一部の SSD コントローラーメーカーは「現象を調査中」としていますが、具体的なファームウェア修正やリコールといった明確なアクションは示していません。結果として、「Windows Update によるソフトウェア的な問題なのか」「一部メーカーのファームウェア起因なのか」「両者が特定条件下で組み合わさった複合要因なのか」といった点は、依然として結論が出ていません。

こうした状況は、ユーザーにとって大きな混乱を招いています。例えば、あるユーザーは KB5064081 適用後に SSD が安定したと報告している一方で、別のユーザーは依然としてストレージの異常を経験しており、報告内容が一致していないのです。このばらつきは、環境ごとの差(SSD の型番、ファームウェアのバージョン、利用状況、書き込み量など)によって挙動が変化している可能性を示唆しています。

結果として、現段階では「KB5064081 が SSD 破壊問題を修正した」と断定することはできず、Microsoft の公式見解とユーザー報告の間に大きなギャップが存在する状態が続いています。この「不透明さ」こそが、サイレント修正説やファームウェア流通問題といった複数の仮説を生み出し、さらなる議論を呼んでいるのです。

別の可能性 ― ファームウェア問題

今回の SSD 破壊問題を巡っては、Windows Update 側の不具合だけではなく、SSD 自体に起因するファームウェアの問題が関与している可能性が指摘されています。特に注目されているのが、エンジニアリングプレビュー版(開発途上版)のファームウェアが誤って市場に出回っていたのではないかという仮説です。

ハードウェアの世界では、製品が正式出荷される前にメーカー内部や限られたパートナー環境で検証を行うための「エンジニアリングサンプル」や「プレビュー版ファームウェア」が存在します。これらは未完成であり、安定性や互換性が十分に確認されていないため、本来であれば一般市場に流通することはありません。しかし PCDIY! の検証報告によれば、実際に入手した SSD でこの未完成版ファームウェアが動作しており、その環境で 24H2 の更新を適用すると SSD が認識されなくなる現象を再現できたとされています。

もしこの見立てが正しいとすれば、問題の本質は Windows Update そのものではなく、試験段階のファームウェアを搭載した SSD がユーザーの手に渡ってしまったことにあります。これは製品管理や品質保証の観点から重大な問題であり、たとえ Windows 側で何らかの修正や回避策が盛り込まれたとしても、根本的な解決にはつながりません。市場に流通してしまった SSD をユーザーが容易に識別することは困難であり、ファームウェアの更新やリコール対応が必要になる可能性すらあります。

さらに厄介なのは、このような SSD が特定の条件下でのみ不具合を引き起こす点です。たとえば大容量データの連続書き込みや、SSD の使用率が高い状態で発生頻度が高まると報告されており、通常利用では問題が顕在化せず「隠れた地雷」として存在するケースも考えられます。ユーザーからの報告内容が一定しない背景には、このようなファームウェアのばらつきがある可能性が否定できません。

この視点から見ると、KB5064081 によって「解消した」とされる現象は、OS 側で間接的にトリガー条件を避けるようになったか、あるいはファームウェア依存の挙動が別の形に変化しただけという解釈も成り立ちます。つまり「Windows Update が問題を修正した」のではなく、「不安定なファームウェアを持つ SSD が市場に存在する」という事実こそが根本原因である可能性があるのです。

過去の事例から見える「サイレント修正」の可能性

Windows Update では、過去にも「サイレント修正ではないか」と噂されたケースが存在します。代表的なのが、2020年2月に配信された KB4535996 です。この更新を適用すると「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア」や「レインボーシックス シージ」など一部の人気ゲームでパフォーマンスが低下する不具合が報告されましたが、その後の更新プログラム適用によって改善が確認されました。しかし、リリースノートにゲーム性能の修正に関する具体的な言及はなく、ユーザーの間で「サイレント修正ではないか」との声が広がりました。

このように、過去にも修正内容が明示されないまま挙動が改善された事例はあり、「サイレント修正はあり得ない」とは言い切れません。今回の KB5064081 に関しても同様に、公式に触れられていないものの副次的に問題が解消された可能性があるという見方が生まれる背景には、こうした前例の存在があるのです。

おわりに

今回取り上げた Windows 11 24H2 における SSD 破壊問題は、単なるソフトウェアの不具合にとどまらず、ハードウェア側の挙動やファームウェア管理、そして更新プログラムの透明性といった複数の論点を巻き込んでいます。KB5064081 を適用した一部の環境で SSD 問題が再発しなくなったとの報告が出ていることは確かに注目に値しますが、Microsoft が公式に「SSD 問題を修正した」と明言していない以上、それを直接的な解決策とみなすのは時期尚早です。あくまで「副次的に改善が生じた可能性がある」という程度に留めておくのが妥当でしょう。

さらに PCDIY! の検証が示すようにエンジニアリングプレビュー版のファームウェアが引き金になったとすると、エンジニアリングプレビュー版のファームウェアが市場に流通していた可能性があることを示唆することになり、そのことが新たなリスク要因となります。本来ユーザーの手に渡るはずのない試験版ファームウェアが製品に組み込まれているとすれば、今後も想定外の不具合が発生する可能性を否定できません。OS 側で問題が一時的に緩和されたとしても、根本的な解決はハードウェアメーカーの対応に委ねられる部分が大きいのです。

また、過去にも KB4535996 で発生したゲーム性能の低下が、その後のアップデートで修正されたことが「サイレント修正されたのではないか」と噂された事例があることから、今回の KB5064081 に関しても同様の憶測が出るのは自然な流れだといえます。Microsoft が必ずしもすべての修正をリリースノートで明示するわけではない以上、「サイレント修正の可能性」を完全に否定することはできません。

こうした状況を踏まえると、ユーザーとして取るべき姿勢は「OS 更新を過信しないこと」です。SSD 問題が解消したという報告が事実であったとしても、それは限定的な環境での改善にすぎず、別の不具合やデータ消失リスクが将来発生しない保証はありません。したがって、3-2-1 バックアップルール(3つのコピーを、2種類のメディアに保存し、そのうち1つはオフサイトに保管する)を引き続き徹底し、どのような不測の事態にも備えておくことが最も現実的なリスク対策といえるでしょう。

参考文献

Windows 11 2025年9月セキュリティアップデート ― KB5064081がもたらす新機能と注意点

2025年9月9日、MicrosoftはWindows 11向けに最新のセキュリティアップデート(KB5064081、ビルド26100.5074)をリリースしました。本アップデートは毎月の定例配信「Patch Tuesday」の一環として提供されるものであり、従来の不具合修正や脆弱性への対応に加え、ユーザー体験を大きく変える新機能やインターフェースの刷新が含まれています。

特に注目すべき点は、これまでプレビュー版や一部のユーザーに限定的に提供されていた機能が、正式に広範なユーザーへ展開され始めたことです。たとえば、AIを活用した「Recall」や「Click to Do」といった機能は、従来のOSの枠を超えてユーザーの行動履歴や作業効率をサポートする役割を担うようになりました。さらに、Windows Helloや通知センター、タスクマネージャーといった日常的に利用する要素の改善も行われており、見た目や操作性の面でも利便性が高まっています。

また、今回のアップデートは単なる新機能追加にとどまらず、Microsoftが推進する「Copilot+ PC」戦略とも密接に関連しています。高性能NPUを備えたデバイスに最適化された機能群は、AIをネイティブに組み込んだ新しいWindowsの方向性を明確に示しており、今後のプラットフォーム進化の布石となるものです。

このように、KB5064081はセキュリティ更新としての役割を果たすと同時に、Windows 11の利用体験を大きく進化させるマイルストーンともいえる重要なアップデートとなっています。

アップデートの概要

今回配信されたKB5064081は、Windows 11 バージョン24H2を対象とした累積的なセキュリティアップデートであり、ビルド番号は26100.5074となります。リリース日は2025年9月9日で、定例の「Patch Tuesday」に合わせて世界同時に配信されました。Patch Tuesdayは、企業システム管理者にとって特に重要な更新日であり、脆弱性修正や新機能追加が一度に適用されるため、運用計画や検証作業に直結します。

今回のアップデートには、既知のセキュリティホールの修正やシステムの安定性改善に加えて、ユーザーインターフェースの刷新やAIを活用した新機能の導入といった「機能更新的な要素」も含まれています。従来、セキュリティ更新と機能強化は分けて提供されることが多かったのに対し、本アップデートでは両者が一体的に提供されており、Windows 11が「AIネイティブOS」として進化を続けていることを示しています。

また、配信方式は段階的ロールアウトが採用されており、すべてのユーザー環境に同時に反映されるわけではありません。利用環境やハードウェア構成によっては、更新直後には一部の新機能が無効化された状態で提供され、後から有効化される仕組みになっています。このため、企業ユーザーは検証環境での挙動確認を経て本番環境へ展開する際に注意が必要です。

さらに、今回のアップデートは「Copilot+ PC」向けの要素を多く含んでおり、高性能NPUやBitLocker対応といった特定のハードウェア要件を満たすデバイスでなければ利用できない機能が存在します。これはMicrosoftが進めるAI統合戦略の一環であり、今後のWindowsプラットフォームが従来型PCとCopilot+ PCで差別化されていく兆候ともいえます。

追加された主な新機能

2025年9月9日に公開された KB5064081(ビルド 26100.5074)には、ユーザー体験や管理機能の向上に寄与する多数の変更と新機能が含まれています。以下に、公式情報や信頼できる報道に基づいた内容をまとめます。

1. Recallアプリのホーム画面刷新(Copilot+ PC専用)

  • Recallのホーム画面が再設計され、検索・最近のアクティビティ・トップコンテンツへのアクセスが容易になりました。タイムラインは別ページで提供されます。  

2. Click to Doにインタラクティブチュートリアル(Copilot+ PC専用)

  • 初回起動時に表示される、テキストと画像で操作を案内するチュートリアルが追加されました。再表示も可能です。  

3. 通知センターに秒表示

  • タスクバーの時計に「秒」単位の表示を追加。Settings > 時刻と言語 から有効化可能。  

4. Windows Search:写真検索のグリッド表示

  • 画像検索結果がグリッド形式で表示されるようになり、ビジュアルの識別性が向上。インデックス未完了時の通知表示も追加。  

5. ウィジェットボードとロック画面の刷新

  • ウィジェットパネルが左ペイン付きの新デザインに。複数ダッシュボード(初期は欧州限定)が追加可能。
  • Discoverフィードに Copilot キュレーション付きストーリーが展開。
  • ロック画面のウィジェットカスタマイズがグローバル対応へ拡張。

6. Windows HelloのUI刷新

  • サインイン画面や認証方法選択をより視覚的に分かりやすく改善。パスキーやRecall、Microsoft Store などでも一貫した新デザインが適用。

7. 設定アプリの強化

  • SettingsにAIエージェントが統合。自然言語で問題を記述し設定を検索・自動構成可能(Copilot+ PC向け、対象拡大中)。
  • 「最近のAIアクティビティ」セクションが追加され、テキスト・画像生成を実行した外部アプリの履歴を表示。  
  • アプリの位置情報やカメラなどへのアクセス許可ダイアログが、画面暗転+視覚強化された形式に更新。  
  • アクティベーション状態表示用ダイアログ(期限切れなど)のUIも刷新。  
  • 高度設定ページ、デバイスカード、追加された時間・言語設定(Control Panelから移植されたもの)も含む。  

8. タスクマネージャーのCPU指標改善

  • 業界標準のCPU計測メトリクスを採用。
  • “Details” タブに新たに“CPU Utility”列が追加可能。  

9. Windows Backup for Organizations(商用向け)

  • 個人向けアプリと同様の機能を備えた、組織用バックアップソリューションが正式提供開始。

10. ファイルエクスプローラーの視覚改良

  • コンテキストメニューにセパレーター導入。
  • ホーム画面にユーザーアイコン付き「Activity」列。「Recommended」セクションではMicrosoft 365パーソナルカードのプレビュー可能。  

11. PowerShell 2.0の廃止

  • レガシーな PowerShell 2.0 が正式に削除・非推奨に。

その他(計画されていたが延期された機能)

  • Settingsホームに「Your Device Info」カード表示。
  • Control PanelからSettingsへのその他移行機能:追加時計や時刻サーバー形式、地域フォーマット、Unicode UTF-8対応など。

利用方法と注意点

アップデートの入手方法

今回のKB5064081は、通常のWindows Update経由で配信されます。

  • 個人ユーザーは自動更新を有効にしていれば順次適用されます。
  • 企業や組織環境では、WSUS(Windows Server Update Services)やMicrosoft Intune経由で配布・制御が可能です。特に業務システムに影響が出る可能性があるため、テスト環境での検証を経て本番環境へ展開する運用が推奨されます。

また、Microsoft Update Catalogからスタンドアロンパッケージ(.msuファイル)をダウンロードして手動適用することも可能です。

機能の段階的展開

本アップデートで追加された新機能の一部は、インストール直後には無効化された状態で提供されます。これはMicrosoftが採用しているControlled Feature Rollout(CFR)と呼ばれる仕組みによるもので、ユーザー環境や地域ごとに段階的に展開されます。したがって、同じKBをインストールしても利用可能な機能に差が出る場合があります。

早期利用の方法(ViveTool)

新機能を即座に試したい場合は「ViveTool」を利用して手動で有効化することが可能です。例えば、以下のコマンドを実行すると、一部の非公開機能を強制的にオンにできます。

vivetool /enable /id:57048218

ただし、この方法は正式サポート対象外であり、将来的に不具合や予期せぬ挙動が発生するリスクもあるため、検証環境での利用が望ましいとされます。

ハードウェア要件への注意

今回のアップデートで導入された RecallClick to Do などの機能は、いわゆる Copilot+ PC を対象にしており、以下の条件を満たす必要があります。

  • NPU(Neural Processing Unit)が40 TOPS以上の性能を持つこと(例:Qualcomm Snapdragon X Elite / X Plus)。
  • BitLockerまたはDevice Encryptionが有効化されていること。
  • Windows Helloが利用可能な環境であること。

これらの要件を満たさないデバイスでは、該当機能が表示されないか、利用が制限されます。そのため、従来型のPCユーザーにとっては「更新後に新機能が見つからない」という状況が起こり得ます。

システム互換性と運用上の注意

  • 企業環境では、セキュリティ更新と新機能追加が同時に行われるため、従来よりも互換性検証の重要度が増しています。特にセキュリティポリシーや独自ツールとの干渉に注意が必要です。
  • PowerShell 2.0の廃止により、レガシースクリプトや管理ツールの一部が動作しなくなる可能性があります。該当環境ではPowerShell 5以降への移行を前提にした運用見直しが求められます。
  • UI刷新(Windows Hello、認証ダイアログなど)により、ユーザーサポートの現場では操作方法や画面デザインの変化に対応した案内が必要になります。

アップデート適用に関するリスクと対策

  • 大規模アップデートに伴うドライバーの互換性問題は過去にも報告されているため、特に業務用PCでは事前のバックアップと段階的導入が推奨されます。
  • 更新後の不具合に備えて、システム復元ポイントやイメージバックアップを作成してから適用するのが安全です。
  • 配信停止やロールバックが必要な場合、wusa /uninstall /kb:5064081 コマンドでアンインストールが可能です。

まとめ

利用にあたっては、更新そのものは従来どおりWindows Updateから実施可能ですが、

  • 機能展開のタイミング
  • ハードウェア要件の有無
  • CFRによる段階配信
  • レガシー機能廃止の影響

といった複数の要素を考慮する必要があります。特に企業ユーザーはセキュリティ修正と新機能導入の両面での検証・準備が不可欠です。

今後の展望

今回のKB5064081によるアップデートは、単なるセキュリティ修正にとどまらず、Windows 11がAIネイティブOSとして進化していく方向性を明確に示しています。特に「Recall」や「Click to Do」のようなCopilot+ PC向け機能は、従来のPC体験を大きく変えるものであり、ユーザーの行動やデータをインテリジェントに記録・支援するという新しい利用スタイルを押し広げていくでしょう。

AI統合の加速

MicrosoftはすでにCopilotをWindowsやOfficeに統合していますが、今回のアップデートでOSレベルでのAI統合がさらに強化されました。今後は、設定管理、検索、ファイル操作など、日常的な操作のあらゆる場面にAIが組み込まれることが予想されます。また、外部アプリケーションの利用履歴やAI生成のアクティビティをOSが直接把握できるようになった点からも、AIがOSの中核機能にシームレスに組み込まれる方向が見て取れます。

Copilot+ PCとの棲み分け

一方で、新機能の多くがCopilot+ PCに限定されていることは、Windowsユーザー全体を二分化する可能性を含んでいます。今後のWindowsは、ハードウェア性能によって利用可能な機能が大きく異なるプラットフォームへ移行することが予想されます。これは、PC市場において新しいハードウェアへの買い替え需要を喚起する狙いもあると考えられます。従来型PCを利用するユーザーにとっては、アップデート後に「何も変わっていない」と感じる一方で、Copilot+ PCユーザーには全く異なる体験が提供されるという状況が広がっていくでしょう。

セキュリティと互換性

今回のアップデートではPowerShell 2.0の廃止など、レガシー機能の整理も進んでいます。これはセキュリティリスクを軽減する一方で、古いシステムやスクリプト資産に依存しているユーザーにとっては対応が求められる領域です。今後も同様の互換性切り捨てが進むことが想定され、企業ユーザーは常に最新の開発環境や運用フレームワークへの移行を計画的に進める必要があります。

Windowsの方向性

総じて、今回のアップデートは「AIによる支援を前提としたOS」への転換点と位置付けられます。従来はユーザーが能動的に操作していた領域にAIが積極的に介入し、効率性や利便性を高める方向へ進む一方、データ活用やプライバシー保護のバランスが今後の重要なテーマになるでしょう。また、Microsoftはクラウドサービス(Microsoft 365、OneDrive、Azure)と連携する形でWindowsを強化しており、今後もローカル環境とクラウドが一体化した体験が広がっていくと考えられます。


このアップデートは、Windowsの未来像を垣間見せるものであり、ユーザーにとっては利便性向上の恩恵と同時に、新しいハードウェアや運用体制への適応が求められる重要な節目となります。

おわりに

2025年9月のセキュリティアップデート(KB5064081、ビルド26100.5074)は、Windows 11にとって単なる脆弱性修正にとどまらず、OSの進化を示す重要な節目となりました。RecallやClick to DoといったCopilot+ PC専用機能の登場は、AIを中核に据えた「次世代のWindows体験」が現実のものになりつつあることを示しています。また、通知センターへの秒表示やWindows HelloのUI刷新といった細やかな改善は、日常的な利用シーンにおける利便性を確実に高めています。

一方で、このアップデートは課題も浮き彫りにしました。特にCopilot+ PC向け機能は高性能NPUやBitLocker、Windows Helloといったハードウェア要件を満たさない限り利用できないため、すべてのユーザーが同じ恩恵を受けられるわけではありません。この「体験の分断」は、今後のWindows利用環境に大きな影響を与える可能性があります。従来型のPCユーザーには「アップデートしたのに変化が感じられない」という認識が広がる一方、Copilot+ PCユーザーは全く異なるレベルの体験を享受できるようになるでしょう。

さらに、PowerShell 2.0の廃止に象徴されるように、古い資産やレガシー機能は順次整理され、セキュリティとモダナイゼーションの両立が図られています。これは組織にとって、システム移行や互換性検証を怠らない体制づくりを求めるシグナルでもあります。

総じて、今回のアップデートは「AI統合の加速」「ユーザー体験の刷新」「互換性整理による将来指向」という三つの柱を含むものです。今後もMicrosoftはこの方向性を強め、クラウドやAIとの融合を前提にしたWindowsを進化させていくと考えられます。ユーザーや企業は、この流れにどのように対応し、どの段階で新しい環境へ移行していくかを見極めることが求められます。

KB5064081は単なるセキュリティ更新ではなく、Windowsの未来に向けた「布石」として位置づけられるアップデートといえるでしょう。

参考文献

「KB5064081」プレビュー版の内容まとめ ― Windows 11 24H2向け最新累積更新(2025年8月29日公開)

2025年8月29日、Microsoftは Windows 11 バージョン 24H2 向けに「KB5064081(OSビルド 26100.5074)」を公開しました。本更新は、いわゆる「プレビュー累積更新」と呼ばれるもので、セキュリティ修正を含まない任意インストール型の更新プログラムです。毎月定例の「Bリリース」(セキュリティ更新を含む公式累積更新)に先立ち、次回以降に反映される改善点や新機能を先行して利用できるのが特徴です。

今回の KB5064081 には、ユーザー体験や利便性を高める数多くの変更が含まれており、タスクマネージャーのCPU使用率表示方式の統一、ロック画面やウィジェットボードの改善、ファイルエクスプローラーや検索機能の刷新、Windows Hello の認証体験向上、さらには Copilot+ PC に関する設定強化など、幅広い領域での進化が見られます。また、システム管理の観点からは、企業向け Windows バックアップの一般提供や PowerShell 2.0 の削除といった、将来の運用を見据えた大きな変化も含まれています。

この記事では、Microsoft の公式サポートページおよび技術系メディアの情報を基に、KB5064081 の変更内容を網羅的に整理します。

主な新機能と改善点

1. タスクマネージャーのCPU使用率表示の統一

  • Processes タブのCPU使用率が他のタブと一致する計算方式に変更。
  • 計算式は「(Δ CPU Time) ÷ (Δ Elapsed Time × ロジカルプロセッサ数)」に統一。
  • 従来の Processor Utility を確認したい場合は、Details タブに「CPU Utility」列を追加可能。

2. Recall 機能の拡張

  • 個人化されたホームページが導入され、Recent Snapshots や Top Apps and Websites を表示。
  • 左側ナビゲーションバーでホーム・タイムライン・フィードバックなどにアクセス可能。

3. Click to Do のチュートリアル追加

  • 初回起動時に対話的チュートリアルを提供。
  • テキスト要約や背景除去などの利用例を提示し、操作を学習可能。

4. プライバシー許可ダイアログの再設計

  • カメラやマイクのアクセス要求時に画面が暗転するなど、より目立つ表示へ変更。

5. 通知センターの大きな時計(秒表示対応)

  • タスクバー通知センターに秒まで表示できる大型時計を追加。
  • 「設定 > 時刻と言語 > 日付と時刻」で有効化可能。

6. タスクバー検索の改善

  • 検索結果がグリッド形式に対応。
  • 画像検索の利便性が向上。

7. ロック画面のウィジェット強化

  • ウィジェットの追加・削除・並べ替えが可能に。
  • 天気、スポーツ、交通情報などを柔軟にカスタマイズ。

8. ファイルエクスプローラーの改善

  • コンテキストメニューに仕切り線を追加。
  • Entra ID(旧Azure AD)でサインイン時、Activity 列や Recommended セクションに人物アイコンが表示。
  • Microsoft 365 Live Persona Card に対応し、組織内の人物情報を確認可能。

9. Windows Hello の刷新

  • パスキーやサインイン手順のUIを刷新。
  • 顔認証が失敗した場合に改善オプションを提示。
  • スタンバイ復帰後の指紋認証が安定。

10. 設定アプリの改善

  • アクティベーションや有効期限通知が Windows 11 デザインに統一。
  • 「プライバシーとセキュリティ > テキストと画像生成」でAI利用アプリのアクセス制御が可能に。
  • Copilot+ PC向けエージェントが AMD/Intel デバイスの英語環境でも利用可能に。

11. ウィジェットボードの拡張

  • 複数ダッシュボードをサポート。
  • 左ナビゲーションバーが追加され、Discover フィードも刷新。
  • Copilot によるストーリーやメディアプレビュー表示。

12. 組織向け Windows バックアップの一般提供開始

  • デバイス移行や AI PC 展開に対応したバックアップと復元の仕組みを企業向けに提供。

13. PowerShell 2.0 の削除

  • Windows 11 24H2 から PowerShell 2.0 は完全削除。
  • 今後は PowerShell 5.1 および PowerShell 7 系列を利用する必要あり。

インストール方法と注意点

KB5064081 は プレビュー累積更新 であり、通常のセキュリティ更新とは異なり、自動的にすべての端末に配信されるものではありません。適用方法にはいくつかの選択肢があり、利用環境に応じて導入可否を判断することが推奨されます。

まず、最も一般的なのは Windows Update を通じた適用です。更新プログラムは「オプションの更新」として表示され、「ダウンロードとインストール」を選択した場合にのみ導入されます。既定では自動的にインストールされないため、安定性を重視するユーザーはスキップすることも可能です。ただし、システム設定で「最新の更新プログラムをすぐに入手する」を有効化している場合、プレビュー更新が自動的に適用されることがあります。

次に、管理者や検証目的で利用する場合は、Microsoft Update カタログ から直接ダウンロードして適用する方法も用意されています。x64 および ARM64 向けのパッケージが提供されており、企業環境では WSUS や Intune を通じて配布することも可能です。

一方で、プレビュー更新にはセキュリティ修正が含まれていないため、導入にあたってはいくつかの注意が必要です。まず、未検証の環境で業務システムに直接適用することは推奨されず、テスト環境での事前検証が望ましいとされています。また、プレビュー更新を避けたい場合は「更新の一時停止」設定を利用することで、自動的な適用を防ぐことができます。なお、今回の改善内容は翌月の定例更新に統合されるため、プレビューを導入しなくても最終的にはすべてのユーザーに反映されます。

このように、KB5064081 の適用はあくまで任意であり、新機能をいち早く試したいユーザーや検証担当者には有益ですが、安定稼働を優先する環境では導入を見送る判断も合理的です。

おわりに

KB5064081 は、2025年8月29日に公開された Windows 11 バージョン 24H2 向けのプレビュー累積更新であり、セキュリティ修正を含まない任意インストール型の更新プログラムです。本更新は、通常の月例更新の前に改善内容を先行適用する位置づけであり、安定版への反映を待たずに新機能を試せる点に大きな特徴があります。

内容を整理すると、ユーザー体験の向上に直結する変更(タスクマネージャーのCPU使用率計算の統一やロック画面・ウィジェットの刷新)、生産性を高める改善(検索機能の強化やファイルエクスプローラーでの組織連携機能)、そしてセキュリティや認証体験の強化(Windows Hello の改良、プライバシー許可ダイアログの見直し)が幅広く含まれています。また、企業利用を見据えた「組織向け Windows バックアップ」の一般提供や、古い PowerShell 2.0 の削除といった管理者向けの重要な変更も注目に値します。

一方で、プレビュー版はあくまで正式リリース前の段階であり、環境によっては互換性や安定性に影響が出る可能性も否定できません。そのため、個人ユーザーが新機能を体験するには魅力的ですが、業務環境では慎重に判断し、検証環境でのテストを経てから導入することが推奨されます。最終的には次回の定例累積更新で同内容が広く配布されるため、必ずしも今すぐ適用する必要はありません。

総じて KB5064081 は、Windows 11 の今後の方向性を垣間見ることができる更新であり、日常的な使い勝手の改善から企業システムの運用に関わる基盤強化まで、多岐にわたる進化を確認できる内容となっています。今後の正式リリースに向けて、利用者は自身のニーズに応じて導入可否を判断することが重要です。

参考文献

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