WWDC25で明らかになったAppleプラットフォームの進化

WWDC25のプラットフォーム向け発表では、Apple製品のソフトウェア全体が一大アップデートを迎えました。特に「Liquid Glass」という新デザイン言語の導入は最大規模の刷新と言えますが、これ以外にもApple Intelligence(AI機能)の拡張、開発ツールやプログラミング言語の進化、visionOSの強化、ゲーム関連技術の充実、SwiftUIの新機能追加など、多岐にわたる発表が行われました。本記事ではそれらのポイントを整理し、わかりやすく解説します。

Liquid Glassデザインの刷新

Appleは新しいソフトウェアデザインとして「Liquid Glass」を発表しました。これはガラスのような光学特性と流動性を兼ね備えたソフトウェア素材で、アプリのUI要素に新たな深みと透明感をもたらします 。たとえば、ボタンやスイッチ、スライダーといった小さなコントロールから、ナビゲーション用のタブバーやサイドバーなど大きな要素まで、液体状のガラス素材が画面上で浮かび上がるように表示されます。Liquid Glassは周囲の光を反射・屈折し、背景のコンテンツを透かして「新たなレベルの活力」を演出しつつ、コンテンツへの注目を高めるデザインとなっています 。また、ダーク/ライトモード環境に応じて色調がインテリジェントに変化し、必要に応じて要素が拡大・縮小するなど動的に振る舞うことで、ユーザーの操作に合わせて柔軟に表示が変化します。

  • 新素材の特徴: 「Liquid Glass」はガラスの光学特性と流体的な感覚を組み合わせたデザインマテリアルで、従来のフラットなUIに透明感と奥行きを追加します 。
  • 幅広い適用範囲: ボタンやスライダーなどの小さなコントロールから、タブバーやサイドバーなどの大きなナビゲーション要素まで一貫してLiquid Glassが適用され、統一感のある外観になります 。
  • アイコン・ウィジェット: ホーム画面やロック画面のアイコン・ウィジェットも新しいクリアなデザインに更新されます。iPadでは「ロック画面やコントロールセンターで体験全体に活力がもたらされる」と説明されています 。さらに専用の「Icon Composer」アプリが提供され、レイヤーやハイライトを組み合わせたLiquid Glassスタイルのアイコンを簡単に作成できるようになります 。
  • 開発者への影響: SwiftUIなどのネイティブUIフレームワークはLiquid Glassデザインをサポートし、既存アプリでもコードをほとんど変更せずに新デザインを取り入れられます 。たとえば、タブバーが自動的に浮いたスタイルになるなど、多くの要素がOSレベルでアップデートされ、再コンパイルするだけで新しい外観を得られます 。

Apple Intelligenceの統合

AppleはAI機能(Apple Intelligence)も大幅に強化しました。まず開発者向けには、デバイス上で動作する大規模言語モデルへのアクセスを提供する「基盤モデルフレームワーク」を発表しました 。このフレームワークを使うことで、アプリ内でオフライン・プライバシー保護されたAI推論機能を無料で利用できるようになります 。Swiftにネイティブ対応しており、わずか3行のコードでApple Intelligenceのモデルにアクセス可能、生成的な文章作成やツール呼び出しなどの機能も組み込まれているため、既存アプリに高度なAI機能を簡単に追加できます 。実例として、日記アプリ「Day One」ではこのフレームワークを利用し、ユーザーのプライバシーを尊重しながらインテリジェントな支援機能を実現しています 。

  • 基盤モデルフレームワーク: 「Apple Intelligenceをベースに、無料のAI推論を利用して、インテリジェントでオフラインでも利用できる新たな体験を提供する」フレームワークが追加されました 。これにより、メモやメールなどのアプリでユーザーの入力をAIで拡張したり、自動要約や文脈理解機能などを組み込んだりすることが可能になります。
  • XcodeとAI: Xcode 26ではChatGPTなどの大規模言語モデルが統合されており、開発者はコード生成やテスト生成、デザインの反復、バグ修正などのタスクでAIを活用できます 。APIキーを使って別のモデルを利用したり、Appleシリコン上でローカルモデルを動かすこともでき、ChatGPTはアカウントなしですぐに利用可能です 。
  • その他のAI機能: ショートカット(Automation)からApple Intelligenceを直接呼び出す機能が追加され、翻訳や画像解析などのAI機能がより身近になります 。また、Apple製品全体では翻訳やビジュアル検索、絵文字生成(Genmoji)などエンドユーザー向け機能も強化されています 。

Xcode 26とSwift 6.2

開発環境も大きく進化しています。Xcode 26では前述の大規模言語モデル統合に加え、開発効率を高めるさまざまな機能が加わりました。たとえばCoding Toolsという機能では、コードのどこからでもプレビューやテスト生成、問題解決などの提案をインラインで受けられ、コーディングの流れを中断せずに作業できます 。また、音声コントロールが強化され、音声でSwiftコードを入力したり、Xcode操作を行ったりできるようになりました 。

  • LLM対応: XcodeにChatGPTなどのLLMがビルトインされ、外部APIやローカルモデルも利用可能に 。AIによるコード生成・ドキュメント作成・バグ修正支援がIDE内部でシームレスに利用できます。
  • ユーザーインタフェース: Xcode 26ではナビゲーションUIの再設計やローカリゼーションカタログの改善など、開発者の作業効率を高める細かな改良も行われています 。
  • Swift 6.2: プログラミング言語Swiftも6.2に更新され、パフォーマンスと並行処理機能が強化されました 。特に、C++やJavaとの相互運用性が向上し、オープンソースの協力でWebAssembly対応も実現しています。また、従来Swift 6で厳格になった並行処理の指定も簡素化され、モジュールやファイル単位でmain actor実行をデフォルト設定できるようになりました 。
  • 新ツール: ContainerizationフレームワークによりMac上でLinuxコンテナが直接動作可能になり、Windows環境からリモートのMacでMac向けゲーム開発を行えるMac Remote Developer Toolsなども提供されます 。加えてGame Porting Toolkit 3Metal 4など、ゲーム開発向けのツール・ライブラリも刷新され、より高度なグラフィックと機械学習のサポートで次世代ゲーム開発を支援します 。

visionOS 26とゲーム関連技術

Apple Vision Pro向けのOS「visionOS」も26にアップデートされ、空間体験やゲーム機能が強化されました。ウィジェットを空間内に固定表示できるようになり、物理空間に溶け込むインタラクションが可能になります。さらに生成AIを使って写真にリアルな奥行きを加えた「空間シーン」や、ユーザーのアバター「Persona」の表現強化などでより没入感が高まっています 。同じ部屋にいる他のVision Proユーザーと空間体験を共有し、3D映画を一緒に観たり、共同作業したりできる機能も追加されました 。

  • 空間体験の拡張: ウィジェットが空間に固定されるようになり、環境に合わせた自然な表示が可能です 。また、360度カメラや広角カメラからの映像に対応するほか、企業向けAPIによりカスタムの空間体験をアプリに組み込めます 。
  • 共有機能: Vision Pro同士でコンテンツを共有し、3Dムービー視聴や空間ゲームプレイ、遠隔地の参加者を交えたFaceTimeなどが楽しめます 。
  • ゲームサポート: PlayStation VR2のSenseコントローラに対応し、より没入感の高い新ジャンルのゲーム体験が実現します 。同時に、Game Porting ToolkitMetal 4の強化も進められ、MacでもPC/コンソール向けゲームの移植・開発が容易になっています 。

SwiftUIの新機能

UIフレームワークSwiftUIにも多くのアップデートがあります。前述のLiquid GlassデザインはSwiftUIコンポーネントにも組み込まれ、ツールバーやタブバー、検索フィールドなどにガラス状のエフェクトが適用できます 。検索フィールドはiPhoneでは画面下部に表示されるなど、操作性の向上が図られました 。さらに、Webコンテンツ埋め込みやリッチテキスト編集、3D空間でのビュー配置など、高度な表現機能が追加されました 。フレームワーク自体のパフォーマンスも改善され、新しいインストルメント(計測ツール)により効率的に最適化できるようになっています 。

  • Liquid Glass対応: 多くのツールバー項目やタブバーがLiquid Glassスタイルになり、遷移時には形状が滑らかに変化します 。ツールバーアイテムには色付け(Tint)が可能になり、コンテンツスクロール時にはツールバーにブラー効果が自動適用されるようになりました 。
  • レイアウト・検索: searchable モディファイアの変更なしで、iPhoneでは検索フィールドが下部に表示されるデザインに切り替わります 。タブアプリでは検索タブが分離され、検索タブがフィールドにモーフィングする新しい挙動になりました 。
  • 新機能: WebViewを使わずにWebコンテンツを表示できる組み込みビューや、リッチテキスト編集機能が追加されました 。加えてSwiftUIで3D空間上にビューを配置する機能も導入され、空間アプリ開発がサポートされます 。

今後の展望

WWDC25で示された新機能群は、Appleプラットフォーム全体の一体化と進化を強く印象づけるものです。Liquid GlassがOSの隅々に浸透することで、ユーザー体験はより直感的で美しいものになります。同時に、Apple Intelligenceの統合やXcodeのAI強化、visionOSやゲーム技術の充実により、開発者はこれまで以上に先進的なアプリを生み出す機会を得ました。各プラットフォーム間で共通化されたデザインや新たなAPIを活用すれば、質の高い体験を短時間で実現できるでしょう。今後のOS更新とツールの公開が待ち遠しい限りです。

macOSでもクリップボード履歴を使用できるようにする(Clipy)

WindowsではWin+Vでクリップボード履歴が使用できます。macOSでもこれと同じような機能が使えるClipyというアプリがあります。

インストール

公式サイトにダウンロードボタンがありますので、そこからdmgファイルをダウンロードし、インストールしてください。インストールして起動すると、アクセシビリティなどの設定を求められますので、設定を行ってください。

インストールが終わるとメニューバーにClipyのアイコンが表示されるので、これでインストールは完了です。

環境設定

メニューバーのClipyアイコンをクリックして表示されるメニューから環境設定を選択すると、環境設定ダイアログが表示されます。そのままでもよいですが使いやすいようにカスタマイズするとよいでしょう。

私の設定

私は連続してコピーしたのちに、それを連続で貼り付けたいだけなので、以下のようにカスタマイズしました。

記録する履歴の数を10に制限し、履歴のソート順を作成日にしました。よく貼り付けるクリップボードはClipyが提供するスニペットを使えばいいと思ったのと、貼り付ける度に順番が変わるとどこまで貼り付けたかわからなくなるので作成日を指定しています。

一般で履歴の数を10にして、インライン表示する項目の数を10にしたことで、すべてインラインで表示し、選択の手間をひとつ減らしました。一度にコピーする数と想定される件数にしておくとよいでしょう。

使い方

コピーはいつもどおりで、貼り付けにCmd+Vの代わりにCmd+Shift+Vを使用します。ショートカットを使うと、

コンテキストメニューが表示されるので、十字キーで貼り付けたいクリップボードを選択し、RETURNキーを押下します。

ショートカットキーは変更できますので、ご使用のキーボードのキー配置に合わせてカスタマイズすることも検討してください。

[macOS] iTerm2で自動的にログを取得する設定を行う

セッション開始時に自動的にログを取得する方法について解説します。

ログの出力先を用意する

作成先はどこでも構いません。使用量にもよりますが、長期間運用しているとそれなりのサイズとなるため、空き容量が少ないストレージや容量が圧迫したときに動作に影響のあるストレージは避けた方がよいでしょう。

特に、容量の少ないMacBookを使用している場合は、すぐにディスクがいっぱいになる場合がありますので、外部の大容量ストレージを使うか、ログを定期的に削除するなどの対策をご検討ください。

本記事では、Google Drive for desktopで作成されるGoogle Driveにログを出力するディレクトリを作成しています。

iTerm2のプロファイル(Profile)を開く

iTerm2のメニューからProfiles > Open Profiles...Command+O)でProfilesダイアログを開きます。

Profilesダイアログ

利用状況にもよりますが、星マークがついているProfile Nameが現在使用しているプロファイル(設定)になります。多くの型はDefaultに星マークがついていると思いますが、私の環境ではGuakeを使用しているため、Guakeプロファイルに星マークがついています。

星マークがついている行を選択し、Edit Profiles...を選択してください。

Preferencesダイアログ

ProfilesタブのSessionタブに移動し、Miscellaneousの「Automatically log session input to files in:」にチェックをつけ、ログの保存先のディレクトリのパスをテキストボックスに入力します。

セッション開始時にログを自動的に作成する設定

変更は保存操作をしなくても即時反映されるため、作業はこれで完了ですので、そのまま閉じてください。

ログが出力されることを確認する

では、実際にセッションを新規作成してログファイルが作成されることを確認してみましょう。

iTerm2のメニューからShell > New WindowCommand+N)もしくはShell > New TabCommand+T)で新しいセッションを開始します。
セッション開始後、Finderでログの出力先にファイルが作成されたことを確認します。

特にファイル名は指定していませんが、ファイル名にセッションを開始した年月日時分秒が含まれていますので、後で探すときに困ることはなさそうです。

では、ファイルを開いてみましょう。ここではテキストエディット.appでファイルを開いています。

ログファイル

Shellの設定によりますが、私の環境ではzshellを使用し、Powerlevel10Kを導入しているため、非常に見にくくなっています。この時点で読める表示になっている方は以降の手順は必須ではありませんが、そうでない方は以降で説明する設定を行ってみてください。

ログをプレーンテキストで出力する

先ほどの設定に戻り、「Log plain text」にチェックをつけます。

Preferencesダイアログ

これで、再度セッションを開始してログを出力した後で、ログファイルをテキストエディット.appで開いてみます。

ログファイル

多少文字化けしている箇所はありますが、先ほどに比べると圧倒的に読みやすくなっています。

「Log plain text」チェックボックスのON、OFFを両方試していただいて環境にあった方を選択してください。

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